アルテグラ。
2025年現行モデルについては手頃な値段に対して良い意味で釣り合いの取れていない、上級機種に迫るスペックや使用感を備えた人気のスピニングリール。
だが、今でこそ中堅機種にギリギリ仲間入りしている感のあるアルテグラも、2000年代~2010年代のものについてはやはり値段相応。ツインパワーやステラには程遠い物だった。
そんな当時のアルテグラで起きた実際のトラブルを書き綴ってみた。
アルテグラのオーバーホール依頼
普段は店内に陳列している物を買うだけしかせず、接客をしようと話しかけるも受け流されるタイプのお客様。
アフターサービスや商品の取り寄せといった店員と絡むこともこれまで全く無かった。
とある平日の午後6時過ぎにそのお客様が来店。
いつものように自分で商品を選んで買ってもらえるパターンだよなと、ご来店ありがとうございますの挨拶をしてすぐに書類仕事へ戻ろうとすると、レジ越しに声をかけられた。
珍しいこともあるものだと思いながらも、気を損ねることの無いようにしっかり対応。
このテのタイプはクセのある人が多いということは知っている。

5-56
「このリール、ゴロゴロ感が出てきたのでのオーバーホールしてほしい」
そう言った後にリール袋からお客様が取り出したのは、アルテグラ2500番だった。
受付をしつつこのリールについて色々とお話を伺うと、昨年から自分なりに分解・清掃等のメンテナンスをしていたとのことだ。
(それは感心なことだが、ならばなぜ部品注文ではなくO.H依頼しに来たんだろう…?)
疑問が生じたことと、客の様子になんとなく違和感があったため「すみません、状態を確認したいので少し触らせてもらいますね」と一声かけハンドルを回す。愕然とした。
2000~2010年代のシマノのリールを触ったことのある方ならば分かっていただけると思うが、
ハンドル回転がシマノのスピニングリールらしからぬ、悪い意味での異常な軽さだった。
ふく郎も稚拙ながら自分でメンテを行なっていたため、原因はすぐに推察できた。
グリスが抜けきっている
ゆっくり回転させていると雫が受付テーブルにポトリと滴る。
ティシューで拭きとり匂いを嗅いでみた。
(これゴーゴーロクじゃん…)
「お客様、もしかして注油に何かの潤滑スプレーを使ってますか?」と聞いてみるとコレが大正解。
購入から現在まで5-56のみでメンテナンスしていたと仰っていた。
5-56は溶剤が入ってるから、グリスのみならずオイルまで洗い流してしまう。
リールに使うような弱く柔らかい油脂は簡単にバイバイしちゃうんだよ (;・8・)
確かに、粘度の高いオイルと置換されてサラサラな5-56がベアリングやメインシャフト等に付着するわけだから潤滑はすこぶる良くなるだろう。
その代償として各部が消耗してなきゃ良いが…。
まぁギトギトに吹いてるみたいだしその辺は傷は浅いだろうと勝手に仮定。だがギヤー類がとっても心配。
ピニオンやマスター等、さらにはクロスギヤー上とその受けとして付いてる樹脂製のギヤー類は恐らく相当に摩耗している。
ハンドルを通して手元に伝わるゴロゴロ感からその状態が容易に想像できた。
そして一番気にかかったのが「ローラークラッチ部」。
この内部に油が入りすぎる、又は油が抜けすぎると、最悪の場合はハンドル逆転ってこともあるのだが…。
試してみると、幸いにもこの部分については問題なく作動しひと安心。

なんとか受付完了
ひとまず上記した内容を丁寧に説明した。
続いて、お客様にとってはとても酷な金額宣告のお時間。
- 「グリスの無い状態で回り続けていたので、ギアー類は総交換になる可能性が高い」
- 「シマノ社外オイル(5-56のこと)が全体に付着しているので、フルオーバーホールになる」
- 「あくまでも最悪の場合の金額ですが、税込みで5~6千円は軽く超えるかもしれません」
(むぅ…)という渋い表情を見せるお客様。
そりゃそうだ、1万円~1万2千円ほどで買ったリールの半値くらいお金が飛んじゃうなら悩むよね。
ここで一つ提案をしてみた。
「部品の交換は必要が無い と明記すれば、シマノ側でも指示された物以外に新規パーツは取付けません。高額にはならないと思います。ただし、グリスやオイルはシマノ純正の物を塗布されて戻ってきますので、現状の回転フィーリングとは全くの別物になって戻ってきます。」
続けて念を押す。「そして恐らくですが、回転時のゴロゴロや僅かな引っ掛かり感等も完全には無くなりませんよ」
値段は張るが元通りに近い状態にするか、それとも安くあげて違和感だらけのまま使い続けるか。
「後々を考えると絶対にお金をかけて直した方が良い」と前者を推すふく郎の意見を採用してもらい、受付から約30分後にようやくオーバーホールお預かりが完了した。
もちろん修理予算金額もしっかり税込みで明記し余計な問題発生を華麗に回避。
とまあ、ここまでは釣具店で良くある至ってフツーな修理受付の様子である。
トラブルはこの3週間後に始まる。
第二話 完結編へ続く
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